ご家族の歴史を紡ぎ、北庭と南庭に抱かれる邸宅
親世帯と子世帯の建物は、ご家族の思い出が詰まったお庭の南側に建築されました。ご新居から見ると北庭になります。
建築当初からのご計画により既存の庭が見渡せるよう窓が設置されていますが、現状はご新居に庭が迫り、北庭のメリットである順光で木々を眺めることが難しい状況です。
今回のリガーデンでは、旧宅から眺めてもご新居から眺めても裏表がなく、どこから眺めても異なる表情を愉しめる庭、光と風を感じられる広がりのある空間への再生が課題となります。
ご家族が長きにわたり慈しんでこられた庭木を残しながら、新たな空間へと生まれ変わるデザイン。さらに、ご新居の南側に新設される細長い庭に奥行きを与え、心地よいリズムを感じながらお庭を散策したり、テラスやデッキでくつろいでいただける空間デザインを模索します。
ご家族を見守るウメノキに抱かれた石貼りのアプローチ。
木々の影が織りなす庭の表情が美しい。
アプローチを進んでゆくと見えてくる北庭
既存の石組みを生かし、新たな造形と石組を加えて枯れ流れのあるデザインに。
写真左奥のモッコクはご家族の歴史とともにあり、この庭に無くてはならない存在です。込み入っていた枝を剪定し、光と風が抜ける樹形に整えていただきました。
写真右の樹齢数十年のウメノキ。
既存の樹木も景観の一部となり空間全体が一体となる空間デザインに仕上げる。
3つの枯れ流れを骨格とし、自然の庭を再現します。
お手入れや旧宅への園路は瓦を再利用
瓦の間に仕込んだ苔が馴染み、思わず触りたくなるほどふわふわに成長。タマリュウと苔のコントラストが美しい。
ライティング
柔らかな灯りで空間を紡いでゆく。夜空に浮かぶ星々のように。
施工前
石組みと松を主体とした和風庭園
玄関からの眺め
一日に何度も出入りする空間を包みこむ緑。
心をリフレッシュし、ストレスから解放される場所でありますように。
アプローチ
奥に見える石の門壁にアイストップ効果の役割を持たせる。
蔵が背景となり庭の景観が引き締まり、
蔵の石壁も緑の効果により生き生きと見える。
施工前
夜の景観
アプローチから入口までのライティング
ご家族の歴史の象徴でもある蔵が幻想的に浮かびあがる。
新設されたファサード
石壁とアイアンの門扉に緑が映える。
美術館のような趣に。
門扉を通り抜けると小さな緑がお客様を迎える。
施工前
室内からの眺め
庭際は、人間の波動と同調する波打つようなリズムを持たせた心地よいラインに。
広がりのあるアオダモの幹の間からは庭の奥の景色が垣間見られ、奥行きも感じる。
窓から見えるこの場所に、森を感じることのできる樹形を選んで植えてくださった職人さんの感性が光ります。
施工前
既存の庭が建物に迫り、風通しや雨水排水に課題がありました。
北庭のメリットである順光で庭を眺めるのは難しい状況。
室内から南庭を眺める
建物の間に設けた植栽帯が、南庭の景色と繋がり広がりを与える。左官仕上げの外壁を背景に坪庭の趣。デッキより南庭と北庭を眺める
心地よい風が通り抜けるデッキスペースは、庭を眺めながらいつまでもくつろぎたくなる空間です。
伸びやかな南庭の景色
北庭を眺める
アプローチ側からの眺めとは異なる表情を見せてくれる北庭
子世帯のファサード
ビルトインガレージのある建物は道路と近く、視覚的に敷地内部と外部との距離を感じられる配慮をします。車動線を確保しつつ、ファサードとプライベート空間全体を一つの流れとして感じられる緑豊かな空間デザインを模索します。
ビルトインガレージの外壁を背景に、表札やポストを配置。
シンボルツリーのバイカツツジが庭の緑と繋がり、空間全体をまとめてくれます。
施主様にご用意いただいたバイカツツジは、サイズも樹形も空間にぴったりです!
お車の動線スペースには、鉄平石貼りを採用し、石の持つ不整形なかたちを生かしたデザインに。スクリーンの足元に残された抑揚のある植栽スペースに高低差のある草木を植込む。
この小さな緑のスペースが、ファサードと庭空間を繋げます。やがて木々が育ち、樹幹の下を行き来する景観となることでしょう。
ガレージから庭を見る
庭エリア
東西に細長い庭空間に奥行きと流れを与え、広がりを感じていただけるデザインです。
天然木のスクリーンを背景に、伏流水から流れがはじまる様を表現。
滝口脇に植栽したモミジの緑陰が、深い森の雰囲気を醸し出します。
プライベート空間へ
植栽により間口を絞り、庭でのくつろぎ感を確保します。
お庭のテラスはガレージ前の石貼りと繋がりを持たせたデザイン。
枯れ流れが景色を与える。
テラスからもガレージ前の緑が見え、空間の連続性が確保されている。
モミジが育ち、小さな流れや景石に森を感じる。
奥へと繋がる緑
親世帯の緑と繋がる
景色はどこまでも続いてゆく
ライティング
夜空に浮かぶ星々のように静かな灯りで紡いだ空間に、静寂な時が流れます。
この特別な空間でご家族が語らい、一日の終わりをくつろいでいただけましたら幸いです。
後記
施主様は美術や建築に造詣が深く、ご新居は日本人の感性に響く居心地の良い空間です。
ご要望は建築当初から計画された庭を眺める窓やデッキからの景色をつくり込むことでした。自然に包まれた新たな暮らしの中で、心地よく過ごしていらっしゃる情景をイメージしながらのデザイン作業はとても楽しい時間です。完成したお庭を眺めながらくつろぎ癒されているお話を伺い、たいへん嬉しく思います。
植栽により日陰ができて居住性も上がり、季節感のある自然を内外で感じる豊かさは、建築と庭が一体となって初めて得られるものではないかと思います。
庭には鳥や虫など生き物が集まってきます。そして、人も手入れすることで庭からエネルギーをもらっている。身体が自然の一部なんだと思い出させてくれる存在でもあると思うのです。
栃木県 I邸
外構工事 (有)秋澤栄祐商店 様
造園工事 (有)川出造園 様
デザイン OTONOHA
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