M邸 機能性と自然豊かな空間を両立させた外構のリフォームデザイン
Ⅿ邸は南北に長い広い敷地の中央に、八角形の建物が建てられています。道路に面したエリアは貸し駐車場やプライベートの駐車場として使われ、建物南エリアが主庭という敷地配置です。主庭に植えてある大きなケヤキの下に広がる手入れの行き届いた芝庭に、ガーデンファニチャーが置かれ、お庭での暮らしを愉しんでいらっしゃるご様子がうかがえます。
そして、ご主人が設計された建物、奥様が選ばれた日常使いの食器、庭の植物、そして会話の中に、Ⅿ様ご夫妻の感性や優しさ、慈しみの心を感じました。
今回のご依頼は、主に道路に面したエリアのリフォームです。
お車の動線、来客や貸し駐車場の確保、野良猫対策、雨水排水の改善、景観の改善、ローメンテナンス、近隣への落ち葉飛散を配慮等、解決しなければならない課題は少なくありませんが、それらを克服し、さらに癒しや愛着を感じていただける、緑豊かな空間デザインを創造していきます。
全景1
施工前
M様が設計された八角形の素敵な建物。
砂利部分の貸し駐車場エリアとプライベートエリアが、ブロックの花壇で仕切られています。車の出入りに不便を感じ、敷地全体の景観を何とかしたいという思いを抱かれていらっしゃいました。
施工後
駐車スペースを広くとりながらも、要所に確保した植栽が空間全体を包み込む。
住まい手だけでなく、道行く人にとっても癒しの空間となり、街並みに心地よい風景を生み出します。
車動線を制限していた花壇を撤去。
駐車場のアスファルト舗装は最小限に抑え、心地良いリズムで玄関まで導くデザインを自然石によって表現。自然石の凹凸により、他者の車での侵入を心理的に抑制する効果も期待できる。
ご来客のお車は、石畳エリアに駐車可能。
前庭
門壁は、古代の地球に思いを馳せる表情豊かな鉄平石。
季節や時間など、気温や日射によって変化する一瞬の美しさに感動を覚えます。
表札はM様自作の陶板。
鉄平石の壁が背景となり、景石や植物に躍動感を与え、木の葉の緑が鉄平石や景石に豊かな表情を与える。
グランドカバーは野良猫対策として砂利敷を採用。
石壁の内側は鉄平石の凹凸が浮かび上がり、正面と異なる表情を愉しめる。
立水栓は、外部の視線を気にせず庭仕事ができる位置に。
小さな庭をしつらえる
石が水にぬれる表情、葉を透過して届く光を感じていただきながら、愉しく庭仕事ができますように。
リフォーム前の玄関回り
ご友人とつくった思い出あるレンガ敷の園路は、時の経過とともに不陸ができ、排水不良の問題を抱えていました。
また、自家用車は充電のため、今まで通り電源が近い玄関前に確保します。
リフォーム後
水勾配を整え雨水の排水不良を解消し、浸透性の機能を期待できる素材に変更。
車の駐車位置はそのままですが、奥へと期待感が高まる素敵な空間になりました。
ブロック塀に添って新設したスクリーンを背景に植栽を施します。
少しの緑を要所に点在させ、緑に包まれた空間を創出します。
玄関から見る景色
波打つような心地よさを覚える自然石のラインとともに、さわやかな緑が目に移ります。
玄関ドアを開けて、最初に見る景色は大切ですね。
園路
施工前
雨水排水不良のため苔むした園路は、凹凸ができ歩きにくさもありました。
施工後
雨どい直下などに砂利の浸透層を設け、透水性の平板を敷き課題を克服。
全景2
カーポートを新設
建物に同化するデザインのカーポートを採用。
カーポートの存在を忘れてしまうほど馴染んでいます。
貸し駐車場とカーポートの間に植栽帯を設け、プライベートゾーンを仕切る
植栽帯の中に園路を設け、手入れのしやすさや回遊動線を確保。
園路周りの景石に緑を添える
庭へと続く駐車場周りの動線
施工前
駐車スペースと園路が区分けされ、狭さを感じさせるレンガ敷の園路
施工後
駐車スペースと園路を一体化し、新設した物置へのアクセスなど、自由な動線を確保
駐車場と庭を繋ぐエリア
浸透性のある伊勢ゴロタ敷は、既存レンガ敷とコンクリートを繋げる。
植栽により空間と空間が繋がり奥行き感も生まれる。
石壁の前庭、駐車場、物置のあるサービスヤードから庭エリアへと、空間が繋がっていき、
ひとつの景観としてとらえることができる。
駐車場と庭を繋げる飛石
ほんの少しの下草と飛石が、一つの景色をつくる。
飛石の園路は、視線が足元へ向かい、庭を感じながら歩ける。
東庭エリア
施工前
建築当初につくられたスクリーンは経年劣化しつくり変え、不陸の無いレンガ敷は残すことに。
施工後
スクリーンを一新。
スクリーン下は、お手入れ軽減のため大谷石を敷き詰めます。
下草は既存のものを生かし、ツリバナを追加植栽。
大きく手を入れなかったエリアですが、スクリーンが背景となり空間が引き締まります。
サービスヤード
施工前
雨が降ると水がたまり、大変お困りでした。
施工後
水がたまるエリアのレンガを撤去し、玄関から続く透水性平板のテラスを設置。
周囲より床面を高く設定。さらに芝や菜園、縁の砂利層に雨水が浸透できるよう、水勾配を設ける。
デザイン面では、既存のレンガ敷と馴染むよう、既存のレンガ敷ラインに修正を加え、透水性平板の目地に動きを与える。
気づけば心和む癒しがある
日本ミツバチの巣箱
出入りするミツバチの姿が愛らしい
日本ミツバチが好むキンリョウヘンを、巣箱の周りに置いていらっしゃるとのこと。
後記
M様は庭の植物や野菜を継続して育てられ、庭にはご趣味である陶芸の作品がさりげなく置かれています。
また、庭のミントを摘んで淹れてくださったハーブティーは、優しくさわやかな香りとともに心身が癒されていくのを感じます。
ご要望の最優先は機能性を高めることでしたが、日々の暮らしを愉しまれていらっしゃる住まい手の豊かな経験と感性を、ガーデンデザインにより表現したいという思いとともに、街並みにも潤いを与える、豊かな癒しの空間デザインを目指し検討を重ねました。
ゾーニングの工夫により配置した、いくつかの小さなスペースに植えた緑は、自然素材の石や木材の構造物に寄り添うことで存在感を増し、少しの植栽で豊かな自然を感じられる空間を実現することができました。
新しく生まれ変わった空間の中で、清々しい風や木の葉が擦れ合う音、葉を透過して届く柔らかな光を感じながら、時を過ごしていただけるよう願っています。
そして、道行く人にも癒しをお届けできますように。
栃木県宇都宮市 M邸
外構工事 (有)秋澤栄佑商店様
造園工事 (有)川出造園様
鉄平石貼り工事 ハシモ株式会社様
デザイン OTONOHA
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