T邸 閉じつつも開放するスクリーンのある庭をデザインする

 T邸はご新築時に駐車スペース4台分の土間コンクリート、境界、アプローチ、そしてリビング前にデッキを設置されました。
リビングの南北には掃き出し窓があり、南窓側はデッキが設置され、北窓側は坪庭がつくれるほどのスペースが確保されています。
その庭の緑や光を室内に取り込み、自然に包まれるような暮らしをイメージできる建物です。
 ただ、現状ではリビングが道路と近く、外からの視線が気になる状況でしたので、カーテンを閉めたままになり、建築当初のイメージとの相違を感じながら生活していらっしゃると事でした。

 内と外を程よく仕切り、外からの視線を気にせず、自然の柔らかな光と緑を室内でも感じていただけるような情景をイメージしながら、デザインに取り組みます。
アプローチや道路に近いウッドデッキでの居心地を改善し、さらに主庭との繋がりを確保するという、閉じつつも開放するという相反する空間の創出が課題となります。




リフォーム前の外観

ご新築時に、境界をブロックとフェンスで囲み、駐車場エリアとアプローチを舗装。インターホンやポスト、表札を取付けた門壁が設置されていました。




リフォーム後の外観

木製のスクリーンであいまいに外と内を仕切ることで、外に閉じつつも内に広がりを感じる空間に。
スクリーンの間から垣間見られる緑にいざなわれ、内への期待感が膨らみます。
また、アプローチラインを変更し角度を持たせることにより、デッキ前に小さな庭をしつらえます。スクリーンの内と外に植栽した草木が成長しますと、デッキに木陰をつくり、ますます居心地の良い空間となるでしょう。


どこから見ても美しい外観



前庭

駐車スペースと建物の間に植栽エリアを設けます。
緑を街並みに提供し、ご近所の方々にも愉しんでいただける前庭は、敷地に広がりをもたらせます。
また、住まい手の豊かさを感じさせてくれる空間でもありますね。

T邸では手前と奥に設けました。



アプローチ

ウッドデッキ周りに庭空間を設けるため、動線を変更。
敷地全体に動きが生まれる。




アプローチに角度を持たせ、建物外観を最も美しい角度で見る。
また、緑を感じながら行き交う、豊かな動線となりました。


玄関からの眺め

防犯対策として、部分的な抜けが効果的。

アプローチ周りに植栽した木々が成長し、数年後にはさらに豊かな空間に。


リフォーム前のアプローチ

門壁から玄関へと真っすぐに伸びるラインは、デッキ直前を通っていました。




庭エリアのデザイン

T様は、外からの視線は遮りつつも、内ではデッキエリアと主庭とが繋がる空間をイメージされていました。
スクリーンの配置や角度に工夫を凝らし、幾重にも重なりながら心地よく続いていく空間をデザインします。


リフォーム前の庭の全景

広く長方形に残された庭エリア




リフォーム後の庭の全景

庭が心地よく幾重にも続き、奥行きを感じられる空間に。
スクリーンの配置により、空間に動きと広がりが生まれます。


お手入れが行き届いた広い芝庭は、お子さんのプールやバーベキューを楽しむエリア。
外の視線を気にせず、ゆったりと過ごせる伸びやかな空間に。

植栽エリアと芝エリアを仕切る役割を持たせた流れ


玄関ポーチ前に小さなテラスを設け、アプローチや庭、デッキへの緩やかな動線を確保。
コンクリート平板だった素材は、高級感のあるタイル張りに変更。



デッキからの眺め
スクリーンによって外に閉じつつも、内では主庭エリアと繋がる開放感のある空間に。
デッキに映る木漏れ日が心地よい。

デッキ前のスクリーンの足元には、アベリアコンフューサとアメリカイワナンテン・レインボーを配植。

デッキ側からも楽しめます。




リビング窓の前にはアオダモとマホニアを配植



物置とスクリーンの関係

物置は、庭と駐車エリア双方から使いやすい位置をご希望でした。
ご購入予定であったシンプルデザインの物置を、庭空間に溶け込ませる工夫と、リビングからの目隠し効果を期待できる位置にゾーニングします。
物置とスクリーンの間から庭の緑が垣間見られます。
物置前の園路は、アプローチで使われていたものを再利用。


物置へと続く飛石と延べ段




北庭

リビングの北窓から見える庭には、苔庭をしつらえます。
柔らかな光の中で、しっとりとした緑の美しさを感じ、心が和みます。



施工後、数か月でモフモフに成長したスギコケ



枯山水

海に浮かぶしまなみを表現しています

モミジ株元の景石の背後に、スポットライトを設置

夜は、非日常を愉しむ特別な時が流れます。


後記

T邸はリビングを囲む壁面3方に緑や光を感じられる窓があり、まさに室内でも自然に包まれる暮らしが叶えられる建物でした。

 ただ、現状はカーテンを開けられない閉塞感や、デッキを活用できていないなどの課題があり、これらを改善し、建築当初のコンセプトを実現できないか、とのご依頼でした。

 お庭が完成し、庭の緑や葉を通して届く柔らかな光を感じながら、豊かな暮らしを愉しんでいらっしゃる事、夜もカーテンを開けたまま庭の夜景に癒されていらっしゃるお話を伺い、私も大変嬉しく思います。

 住宅というのは暮らす場所であり、帰ってくる場所ですから、ストレスを抱えて帰ってきたときに、ストレスから解放され、元気をもらう場所でありたいと。

日常の忙しいリズムと違う、身体が自然の一部であることを思い出させてくれるのが庭であると思います。

庭には鳥や虫が来たり生き物が集まってきます。刻々と変化する庭そのものが生き物。

そして、その庭を手入れすることでエネルギーをもらっていると実感しています。


栃木県宇都宮市 T邸

外構工事    (有)秋澤栄佑商店様

造園工事    (有)川出造園様

デザイン    OTONOHA



OTONOHA

OTONOHAは、庭と外構のデザイン室です。 機能と美しさの中に付加価値を兼ね備えたガーデンデザインを追求しています。 住み手のライフスタイル、その場の環境、建築とのバランス等を吟味し、 どのような条件でも、必ずその場所でしかできないエクステリアデザインを創造し、提案いたします。 日々の暮らしを大切にする想いを共有し、 お庭づくりを一緒に進めさせていただければ幸いです。

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