I邸 ミニマムな前庭をしつらえた、シンプルモダンなエクテリアデザイン
I邸は、60坪ほどの敷地に車4台分の駐車スペースや、玄関ポーチの軒下にバイクや自転車置き場もあり、さらにプライベートな中庭も確保されています。
敷地に一切の無駄がないゾーニングがなされた建築です。
I様と建築に携わった方々の思いを、さらにエクステリアで高めていきたいと考え、
限られたスペースの中で、豊かなファサードを生み出すことを課題とし、デザインに取り組みました。
シンプルモダンなファサード
駐車スペースは普段は車2台駐車ですが、来客や将来的なことを考えて4台分を確保しています。そのため、ファサード部分に関してはコンクリートのみで、他には何もできないとあきらめていましたとI様。唯一のご希望は、玄関ポーチへのサブ動線を設けることでした。
このサブ動線に前庭の意味合いを持たせ、機能だけでなく緑のある豊かな空間を設けられるポテンシャルがあること、アプローチと駐車エリアの床を同一素材にし、敷地全体に広がりを感じられるようなデザインが可能であることをお話させていただき、その方向でデザインを提案させていただくことになりました。
また、使用頻度の少ない駐車エリアは、お庭の一部として考え、中庭へと続く期待感を演出するデザインとしました。
植え込みスペースはほんの僅かですが、シンボルツリーとして、根鉢や樹形を選定した株立ちのアオダモを植え、空間に広がりを持たせます。樹皮と木の葉の緑が白い外壁に映えます。
さらに、玄関と道路が近いI邸ですが、前庭を通ることで内から外へ、外から内へと気持ちを切り替えることができます。
そして、街並みに解放された前庭が、住み手だけでなく、通りゆく人たちにも楽しんでいただける空間となりますように。
玄関へのサブ通路。
両脇に植栽した下草は、大谷石を引き立ててくれます。
下草のコクチナシの純白の花は梅雨空にさわやかさを感じ、通る度に甘美な香りが漂います。
花言葉は、「喜びを運ぶ」「洗練」「優雅」。
I様ご家族に多くの幸が訪れますようにと願いを込めて。
一つの素材で床をまとめることで、敷地全体に広がりを感じるデザインに。
温かみのある石畳風のテクスチャーと白い外壁の取り合わせがカフェの雰囲気です。
建物基礎との間にラベンダーを列植しました。
来年には、その存在感を発揮して、建物が緑で包まれた豊かな空間となるでしょう。
予備の駐車スペースは、車のタイヤ動線部分に大谷石を敷きました。
例えば、そこにベンチを置いて、お庭をいつもと反対側から眺めて楽しむなど、テラスとしてもご使用いただけます。
大谷石と芝生のラインは、エリアごとの景色が途切れることなく、外から内へと一つの流れの中で移り変わり、中庭への期待感が膨らみます。
敷地全体の空間が一体となるようなデザインを心がけています。
木漏れ日に癒される雑木の庭
駐車スペースと庭部分を建物で仕切ってある中庭。
ベンチとしても使える奥行き3尺のデッキが、建物の形に合わせてL字型に設置されています。
外構工事において、境界ラインにスクリーンを設置すれば、外部の視線を気にすることなく、くつろげるスペースは確保できます。
ご要望である菜園の適地を探りつつ、周囲の景色に溶け込むよう配置し、限られた広さの中庭に、奥行きと広がりを感じていただけるようなデザインを課題として取り組みました。
駐車場から続く中庭。
芝生のラインに流れを持たせ、奥行き感を演出しています。
植栽エリアを一段高くすることにより、室内からの眺めに、広がりと一体感が生まれます。
さらに、目隠しのスクリーンが背景となり、庭の景色が引き締まります。
様々な夏野菜を育てていらっしゃいます。
春から夏にかけて野菜を育てたいとのご要望でしたので、植栽エリアに菜園を入れ込み、秋や冬は、一年草などを楽しんでいただけるようにと考えました。
写真上
建物近くにヤマモミジを植えさせていただきました。
室内にいながら、緑陰や木の葉の揺らぎ、葉を透かして届く光を楽しむことができます。
さらに、手前と奥に樹を植えることで、お庭全体に奥行きや広がりを感じさせる効果もあります。
写真下
デッキに腰かけてみる景色。
木の葉が風に揺られ、芝やデッキに映る木漏れ日が心地いい。
駐車スペースから庭へと溶け込む大谷石は、立水栓周りへの動線にもなっています。
大谷石は、時とともに風化して経年変化を楽しめる石材です。
次第に庭の緑に溶け込み馴染んでいきます。
写真上
泉からの湧き水が伏流水となり、そして川となる様を表現しています。
写真下
川の流れは、芝の見切りとしての機能も持たせます。
後記
建築当初から庭として残すエリアを熟慮したI邸は、限られた敷地を使い切った感があります。エクステリアデザインは、そのコンセプトに沿いつつ、自然からの癒しを身近に感じられる豊かな暮らしをイメージしながら、デザインを進めさせていただきました。
ご竣工後に、I様から「緑の見える暮らしは心地よく、自然とお庭に目が向きます」とのお話をいただき、本当にうれしく思います。
野菜作りも楽しんでいらっしゃるご様子で、夏の収穫が楽しみですね。
お庭づくりは、竣工がスタートです。ここからは庭主さんの個性が加わって、益々豊かなお庭を育んでいただければと願っております。
栃木県宇都宮市 K邸
外構施工 秋澤栄佑商店
造園施工 川出造園
デザイン・設計 OTONOHA
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